大腸肛門外来
相談しづらいおしりの病気
当院ではおしりの病気でお悩みの方を対象として、電話相談を開催しています。
肛門の「痛み・出血・腫れ・便秘・違和感」があるけれど、
- 診てもらうのは恥ずかしい
- 悩んでいるけれど、誰に相談すればよいのかわからない
と思われている方は、ぜひご相談ください。担当看護師が対応いたします。
身近な「痔」のおはなし
「痔」とは20数種類ある肛門の病気の総称で、特に「痔核(いぼ痔)」、「裂肛(切れ痔)」、「痔瘻(穴痔)」は肛門の三大痔疾患と言われ、その9割を占めています。世界共通の疾患で成人の三人に一人は罹患していると考えられていますが、恥ずかしさからか専門医への受診が遅れ、日本人には重症化している患者さんが多く見受けられます。肛門科への受診は一般的に男性が多いのですが、実は「痔主さん」は圧倒的に女性の方が多いのです。
女性はなぜ?
では、なぜ女性に多いのでしょう?痔の最大の原因、それは便秘です。女性の場合は生理前にホルモンの作用で腸の働きが鈍くなるため、便秘になりがちです。また、過度なダイエットにより食事量が減り、便秘になることもあります。それ以外にも女性特有の妊娠や出産がきっかけで起こることもあります。
痔核(いぼ痔)
痔核は痔の中でもっとも多い病気です。肛門を閉じる働きをする粘膜の下には血管が多く集まった部分があり、それを肛門クッションと呼びます。直腸側の肛門クッションや肛門側の肛門クッション部分がうっ血してふくらんだものを痔核といいます。この痔核が歯状線より内側にできたものを内痔核といい、外側にできたものを外痔核といいます。どちらかというと内痔核の方が多く発生します。
痔核の主な発生要因
- 便秘
- 下痢
- 激しい運動
- アルコールや刺激物
- 長時間同一姿勢
- 妊娠、出産
内痔核の治療
痛みはほとんどありませんが、排便時の出血や肛門からの脱出が主な症状です。肛門から出血した場合は、腸に他の病気がないかを調べる必要があります。真っ赤な出血だからといって「痔」だと自己診断しないことが大切です。一度、病院で診察を受けましょう。
主な症状
- 痛みはほとんどない
- 排便時の出血
- 肛門からの脱出
考えられる他の病気
- 大腸癌
- 虚血性大腸炎
- 大腸憩室出血
- 炎症性腸疾患(クローン病 潰瘍性大腸炎)など
重症度
Ⅰ度 | 排便時に出血するが痛みはない |
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Ⅱ度 | 排便時に脱出するが、排便後は自然に戻る |
Ⅲ度 | 排便時に脱出し、指で押さえないと戻らない |
Ⅳ度 | 排便に関係なく常に脱出して戻らない |
内痔核の治療法
保存治療
【たまに出血する、あるいは脱出しても日常に支障が無い場合】
- 肛門を洗い、肛門衛生に留意する
- 排便を整え、下痢の時は刺激やいきみを減らす
- 同一姿勢を長時間とらない
- 激しいスポーツを控える
- アルコールや香辛料を控えめにする
【出血を繰り返す、または脱出により痛みを伴う場合】
- 坐剤、内服薬を使用する
※保存的治療を行っても出血により貧血を来したり、脱出により日常に支障を来す場合には、手術による治療が必要になります。
外来処置
- 注射療法:ALTA療法(内痔核硬化療法)
痔核に直接注射し、痔核を固める。痛みはあまり伴わない。 - ゴム輪結紮法
輪ゴムで縛って壊死させる、1~2週間で脱落する。
手術
- 結紮切除術(半閉鎖法):あらゆる重症の痔核に適応
痔核に血液を送っている血管をしばり、痔核を切除する。
裂肛(切れ痔)
女性に多い病気で、便秘により硬くなった便で肛門が傷つき肛門の皮膚が切れて起こります。
また、慢性的な下痢による炎症として起こることもあります。
主な症状
- 排便時の激しい痛み
- 排便時の出血
裂肛の治療法
- 生活改善+薬物療法
- 用手肛門拡張術(ストレッチ法)
麻酔をして指で拡張 - 側方内括約筋切開術(LSIS法)
括約筋を切開して緊張を取る - 皮膚弁移動術(SSG法)
正常な肛門皮膚をスライドさせる
痔瘻(肛門周囲腫瘍)
男性に多い病気です。歯状線のくぼみから細菌が入り込み肛門腺が化膿すると、肛門周囲に広がって膿(肛門周囲膿瘍)がたまります。これが自然に破れるか切開することで、排泄されその管(瘻管〈ろうかん〉)ができることを「痔瘻」といいます。
主な症状
- おしりが腫れてズキズキと痛む
- おしりに痛みがあり、発熱が伴う
- 排便と関係なく、座っただけで痛む
- おしりから膿がでることがある
- 肛門のまわりにしこりがある
痔瘻の治療法
手術
- 切開開放術
単純手術で再発は少ないが、肛門がゆるくなる場合がある - 括約筋温存術
括約筋を切らず肛門機能を維持するが、再発の可能性がある
「痔」は身近な病気で特別ではありません。糖尿病や高血圧と同じように日々の生活で、予防する事のできる生活習慣病なのです。少しでも症状があれば、恥ずかしがらずに診察を受けましょう。