甲状腺とその病気
甲状腺のその他の病気
単純性甲状腺腫
この病気は思春期に多く見られます。甲状腺が全体に腫れていますが、軟らかいのが特徴です。甲状腺機能は正常で、抗甲状腺抗体は陰性です。炎症所見は無く、治療の必要はありませんが、慢性甲状腺炎が潜んでいる可能性もありますので、2~3年後には再検査したほうが良いでしょう。
妊娠中に起きる甲状腺機能異常
妊娠初期でつわりがひどい人の中に、甲状腺ホルモン値が高くなることがあります。それは、妊娠甲状腺中毒症や妊娠前期−過性甲状腺ホルモン過剰症と呼ばれます。症状は心臓のドキドキ、発汗過多、体重減少などバセドウ病の症状と同じですが、原因は胎盤から出るホルモンが甲状腺を刺激するためと考えられています。特別な治療をしなくても妊娠の中期から後期に自然に軽快するのが特徴で、甲状腺の腫れはなくTRAbは原則として陰性です。しかし、バセドウ病との鑑別が問題となることもあります。
出産後に起きる甲状腺機能異常
出産後に血中の甲状腺ホルモンが高い値を示す場合や低い値を示す場合はかなり多く、それまで甲状腺に異常が診られなかった人では、約25人に1人いると言われています。「産後の肥立ちが悪い」、「育児ノイローゼだ」などといわれた人は、甲状腺機能異常の可能性が指摘されています。妊娠中は体の中の胎児を守るために免疫機能が押さえられていますが、出産後はその必要がなくなり反動として活発になることで甲状腺の病気が生じると考えられています。
出産後に起こる甲状腺の異常
甲状腺ホルモンが高くなる場合
- バセドウ病
- 甲状腺が壊れ、血中にホルモンが漏れる
症状
- 疲れやすい
- 心臓がどきどきする 等
病気を区別する検査は放射線を用いるため、授乳中の場合はできません。そのためすぐには治療をせず、甲状腺ホルモンの変化を2~3ヶ月診てから判断する場合があります。また、甲状腺が壊れてホルモンの値が高い場合は、治療をしなくてもホルモンの値が徐々に低下していきます。
※甲状腺ホルモンが高くなった後に、低くなる場合もあります。
甲状腺ホルモンが低くなる場合
症状
- 肩こり
- 疲れやすい
- 食欲がない
- 便秘等
この場合も経過を診ているだけで甲状腺ホルモンが正常化する場合があります。出産後の甲状腺異常は、多くの場合に症状が軽いので経過を診ているだけで積極的な治療を必要としません。しかし、バセドウ病や回復しない機能低下の場合もあるため、出産後に体調が悪いときは、甲状腺の異常も考えるようにして下さい。
低T3症候群
甲状腺以外の病気で血中甲状腺ホルモンの異常を示すことがあります。軽度の場合はフリーT3が、重症になるとフリーT3とフリーT4の両ホルモンが低値を示します。体を守るため、代謝が亢進しないように、ホルモンの濃度を低下させているものと考えられています。TSHは一般的には正常ですが、軽度低値を示すこともあります。
低T3症候群の原疾患
- 低栄養状態
- 糖尿病
- 肝疾患
- 腎疾患
- 心筋梗塞
- 感染症
原疾患が回復すれば、甲状腺ホルモン値は正常化しますので、甲状腺ホルモンの投与は行いません。
薬剤による甲状腺機能異常
甲状腺疾患以外の病気のお薬が、甲状腺ホルモン値に影響を及ぼすことがあります。ホルモン値が高くなる場合や低くなる場合もあります。原因薬剤を中止することが原則ですが、中止できない場合は、原因薬剤を続けながら対症療法を行う場合もあります。