甲状腺とその病気
副甲状腺の病気
副甲状腺は甲状腺の後面に左右2個ずつ計4個あり、その大きさは米粒大です。副甲状腺ホルモン(PTH)を分泌し、血中のカルシウム(Ca)濃度を調節しています。
血中のCa濃度が上昇した時の症状
- 吐き気
- 嘔吐
- 便秘
- 頭痛など
血中のCa濃度が低下した時の症状
- テタニー発作(指の硬直)
- 全身けいれん
- しびれ感
- 知覚異常など
原発性副甲状腺機能亢進症
原発性副甲状腺機能亢進症とは副甲状腺の腺腫(77%)・過形成(13%)・癌(6%)などが原因でPTHの過剰分泌がおこり、高Ca血症を引き起こす病気で3型に分けられます。
- 化学型:症状は無いが、たまたま検査で高Ca血症が発見された場合
- 尿路結石型:尿中のCa濃度が高いため、結石ができた時
- 骨型:骨からCaが血中に動員されるため骨がもろくなり気付かれる場合
臨床的には1の場合が圧倒的に多く、2の場合は極めて稀です。
診断
- 血中Ca濃度およびPTHの測定
- 頸部エコー
- シンチグラム等
治療
手術療法が主ですが、血中Ca濃度や臨床症状によっては経過観察することもあります。
無症候性の副甲状腺機能亢進症の手術適応ガイドライン(2013年)
- 血清Caが正常範囲より1mg/dlを超える時
- (a)骨密度の減少(T−スコア<2.5)
※T−スコア:若年齢の平均骨密度値(基準値)0として、標準偏差を1SDとして指標を規定した値です。
(b)単純X線写真・CT・MRIなどの検査で脊椎の骨折を認める時
- (a)腎機能低下(クレアチニンクリアランス<60ml/分)
(b)24時間の尿中Ca排泄量>400mg/日
(c)尿結石、腎石灰化が有るとき - 50歳未満
上記のいずれかを充たした時です。 最近、カルシウム受容体作動薬であるシナカルセト塩酸塩錠が副甲状腺癌や副甲状腺摘出不能または術後再発の原発性副甲状腺機能亢進症による高Ca血症の治療に用いられるようになりました。肝機能障害・消化管出血・消化管潰瘍のある患者さんやその既往歴のある患者さんには慎重に投与する必要があります。
副甲状腺機能低下症
副甲状腺機能低下症とはPTHの作用不足による病気で、2者に分けられます。
- PTHの分泌が低下または欠如している場合
- PTHは分泌されているが、その作用が十分にできない場合
臨床的には1の場合が圧倒的に多く、2の場合は極めて稀です。
原因
甲状腺の手術後などにPTHの分泌が障害されるなど、副甲状腺が他の原因により障害されるため起きる
治療
活性ビタミンD製剤やCa製剤の投与
副甲状腺のう胞
副甲状腺にも甲状腺のう胞と同じようにのう胞があります。エコー検査ではのう胞内部は通常無構造で、穿刺液は無色透明で水のようです。穿刺液に含まれる副甲状腺ホルモンの濃度を測定し診断します。一般的には経過観察ですが、血中Ca濃度が高いときは、摘出手術が選択されます。
ビタミンD欠乏症
ビタミンD欠乏症は骨密度の低下・転倒・低Ca血症などを引き起こします。そのため骨痛や骨の圧痛・筋力低下・骨折・歩行困難を生じることがあります。
原因
- 胃腸障害
- ビタミンD摂取不足
- 太陽への暴露時間の極端な減少など