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栄養課

食事の種類

加熱食について

抗癌剤治療や造血幹細胞移植では、副作用による骨髄での細胞増殖抑制により、白血球減少をきたしやすくなります。白血球減少や免疫不全状態が生じて感染しやすい状態に陥った患者様に対し、食事からの感染を防ぐために、加熱殺菌処理をした食事を提供します。
この食事は、クリーンルーム(無菌室)に入室された患者様が対象です。当院では2段階の衛生管理区分を設け、病状に適した段階の食事を提供します。

準加熱食 生菌数の多い食品を制限し、十分に加熱した食品、缶詰食品、個包装の食品以外は提供しません。
加熱食 十分に加熱後、2時間以内に提供します。加熱後2時間以上経過した食品は殺菌を目的として再加熱するため、長時間の加熱調理に耐えうる食品を中心とした献立になっています。
食事の基準
肉・魚介類・卵 食中毒を起こす菌による食品汚染の可能性が高いため、十分に加熱して提供します
生野菜 土壌中の菌による食品汚染の可能性があるため、十分に洗浄し、十分に加熱して提供します
生果物 皮が厚い果物(バナナ・みかん)のみ非加熱で提供し、これ以外は果物缶等を使用します
乳製品 殺菌表示のあるもの以外は使用しません
チーズ カマンベール等のカビの生えたチーズは使用しません
味噌 真菌による発酵醸造した食品のため、加熱して提供します
納豆 加熱しても菌が死滅しないため、病原性は低いですが使用しません
豆腐 殺菌表示や充填製法のものでも、加熱して提供します
漬物・梅干 調理工程の衛生管理が確認できないため、使用しません
缶詰・レトルト食品 破損がないものを選択し、開封後2時間以内に提供します
デザート 個包装された冷凍のデザート(ゼリー・プリン)を選択し、解凍後2時間以内に提供します
はちみつ 殺菌表示のあるもの以外は使用しません

衛生的な食事のポイント

1. 調理者の健康状態
  • 下痢や嘔吐の症状がある場合は、食品を汚染する危険があるため、調理作業を避けます。
  • 手指に傷がある場合は、傷口に黄色ブドウ球菌が繁殖しているため、食品に直接触れないようにします。
2. 食品の購入と保存
  • なるべく新鮮な食品を選択し、使用時には消費期限、賞味期限を確認し、開封後は速やかに使い切ります。
  • 非加熱で摂取する食品(マヨネーズ、ドレッシング、ソース、佃煮等)は、開封後長時間経過すると生菌数が増加するため、1食用に個別包装されたものを選択します。
3. 手洗い

手洗いはタイミングが重要です。

  • 帰宅時:外部の菌を持ち込まないため
  • 調理前:食品に菌を付けないため
  • 生の肉・魚・卵に触れた後:他の食品に菌を移さないため
  • 調理済み食品に触れる前:食品に菌を付けないため
  • 食事前:食器・食品に菌を付けないため
4. 調理
  • 食品の中心部まで十分に加熱します。
  • 調理器具や調理台は常に清潔にし、加熱の前後でまな板、ざる、ボール等を使い分けて2次汚染を避けます。
  • 非加熱で摂取する食品や調理済み食品に素手で触れることを避け、手指の菌の付着を防ぎます。
  • 調理済み食品は時間経過と共に生菌数が増えるため、速やかに食べます。

準加熱食の献立例

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  • ごはん
  • あじの蒲焼き
  • 南瓜のエビそぼろ煮
  • アスパラと人参の酢味噌和え
  • バナナ

献立のトータル栄養価(1人分:ごはん普通盛の場合)

エネルギー(kcal) 650 たんぱく質(g) 24.3
食塩相当量(g) 2.2 脂質(g) 6.5
食物繊維(g) 5.5 炭水化物(g) 120.6
あじの蒲焼き

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家庭でも簡単にできるあじの蒲焼きです。フライパン一つで簡単にできる上、甘辛い味付けで食べやすく、副作用による味覚異常や臭覚異常がある場合、食欲がない場合でも喜ばれるでしょう。

材料(2人分)

A:

  • あじ・・・・・・・1尾(切身60g)
  • 酒・・・・・・・・小さじ1/3
  • 小麦粉・・・・・・5g
  • さとう・・・・・・小さじ1/2
  • しょうゆ・・・・・小さじ1/2
  • みりん・・・・・・小さじ1/3
  • 油・・・・・・・・小さじ1/2

B:付け合せ

  • さやいんげん・・・20g
  • しょうゆ・・・・・小さじ1/3
作り方
  1. あじは3枚卸しにして酒をふりかけ、5分程度おく。
  2. さとう、しょうゆ、みりんを混ぜ合わせ、蒲焼きのたれを作る。
  3. 付け合せのさやいんげんは、茹でてしょうゆで和えておく
  4. キッチンペーパーであじの余分な水分を拭き取り、小麦粉をまぶす。
  5. フライパンに油をひき、あじの皮側を下にして入れ、キツネ色になるまで焼く。皮側が焼けたらひっくり返して同じ様に焼く。
  6. 両面焼けたら2.のたれを加え、あじに絡ませながら煮詰める。たれが煮詰まったら皿に盛り、さやいんげんを付け合せて、できあがり。
一口メモ
  • 小麦粉は焼く寸前にまぶします。時間が経つと魚から出る水分でベタベタになってしまいます。また、小麦粉をまぶす時は、ビニール袋に小麦粉とあじを入れて軽く振ると手や器を汚さずにできます。
  • あじ以外にもさんま、いわし、豆腐などでもおいしくできます。
  • たれに梅肉や酢を少し加えると、酸味でさっぱりと食べられます。
在宅療養中のメニューの工夫
あじの蒲焼き

魚は中心部まで十分な加熱が必要です。家族が刺身等の生ものの時は、焼魚や煮魚に変更します。
また、副作用による味覚や臭覚異常がある場合は、蒲焼き等の濃いめの甘辛い味付けにすると魚の生臭みが消えて食べやすくなります。

アスパラと人参の酢味噌和え

和え物や酢の物、サラダには非加熱の食品を使用する場合がありますが、加熱処理に適した食品に変更するか、通常生食する食品(きゅうり、トマト等)でも加熱処理を行います。
また、副作用による味覚や臭覚異常がある場合は、冷たい料理にすると臭いが抑えられ、酢や香辛料等で味にインパクトを付けると食べやすくなります。

果物

皮の薄い果物(いちご、ぶどう、キウイ、もも等)や、カット後長時間経過した果物は禁止対象食品です。果物の缶詰や、皮が厚い果物(バナナ、みかん)に変更します。尚、生で摂取する果物は、皮ごと十分に洗浄しましょう。

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