岐阜赤十字病院
なぜ?なに?甲状腺

甲状腺とその病気

甲状腺機能亢進症(バセドウ病、グレーブス病)

甲状腺機能亢進症とは、甲状腺が活発に活動し、血中に甲状腺ホルモンが多く分泌される病気で、バセドウ病やグレーブス病とも言われます。原因としては、健常な人には認められない甲状腺を刺激する異常な物質が血中および組織の中に存在するためと考えられます。その物質は測定方法によりTRAbやTSAbと呼ばれています(図11)。甲状腺機能亢進症ではフリーT3とフリーT4を比較すると、フリーT3の方が血中濃度が高いことが多いようです。

甲状腺機能亢進症の説明

甲状腺ホルモンが多いため、熱産生の増加および組織の交感神経感受性の亢進があります。熱産生増加の症状としては、暑がり・発汗過多・体重減少・食欲亢進があり、組織の交感神経感受性亢進としては、動悸・体動時息切れ・ふるえ・不眠・不安を示します。たとえて言えば、お風呂に入った直後に100mを走った状態を考えていただければとわかり易いかと思います。
当院が自覚症状を検討した結果、疲れやすいと訴える人が約70%、汗が多い・息切れ・心臓がどきどきする・手がふるえるが50〜60%、肩こり・甲状腺の腫れ・体重減少・熱感・皮膚がかゆいが40〜50%となりました。

日本甲状腺学会 診断ガイドライン2013

a) 臨床所見

  1. 頻脈、体重減少、手指振戦、発汗増加等の甲状腺中毒症所見
  2. びまん性甲状腺腫大(甲状腺が全体に腫れている)
  3. 眼球突出または特有の眼症状

b) 検査所見

  1. フリーT4、フリーT3のいずれか一方または両方高値
  2. TSH抵値(0.1μU/m1以下)
  3. 抗TSH受容体抗体(TRAb、TBII)陽性または甲状腺刺激抗体(TSAb)陽性
  4. 放射性ヨード(またはテクネシウム)甲状腺摂取率高値、シンチグラフィでびまん性

  • バセドウ病
    a)の1つ以上に加えて、b)の4つを有するもの
  • 確からしいバセドウ病
    a)の1つ以上に加えて、b)の1、2、3を有するもの
  • バセドウ病の疑い
    a)の1つ以上に加えて、b)の1と2を有し、フリーT4、フリーT3高値が3ケ月以上続くもの
  • 心臓がどきどきする
  • 手がふるえる等

付記

  1. コレステロール低値、アルカリフォスターゼ高値を示すことが多い。
  2. フリーT4正常でフリーT3のみが高値の場合が稀にある。
  3. 眼症状がありTRAbまたはTSAb陽性であるが、フリーT4およびTSHが正常の例はeuthyroid Graves' disease(甲状腺機能正常のバセドウ病)またはeuthyroid ophthalmopathy(甲状腺機能正常の眼症)といわれる。
  4. 高齢者の場合、臨床症状が乏しく、甲状腺腫が明らかでないことが多いので注意をする。
  5. 小児では学力低下、身長促進、落ち着きの無さ等を認める。
  6. フリーT3(pg/ml)/フリーT4(ng/dl)比は無痛性甲状腺炎の除外に参考になる。
  7. 甲状腺血流測定・尿中ヨウ素の測定が無痛性甲状腺炎との鑑別に有用である。なお、肝機能の異常を示すことも多く(当院の統計では84%の患者さんに何らかの異常を認めています)、白血球がやや低下することもあります。TRAbやTSAbの測定で少数の患者さんは陰性を示します(検査の感度に問題があると言われています)。TRAbとTSAbの両者が測定されていた最近の未治療バセドウ病91例の検討では、TRAbの陽性率は96%(87/91)、TSAbの陽性率は99%(90/91)となっていました。なお、両者陰性の例は認めませんでした。

ページの先頭へ